住めば都。朽ちることのない精神。
- 田原 伴行

- 2022年4月9日
- 読了時間: 2分

斗室の中に、万虜を都てすつれば、甚の画棟に雲を飛ばし、珠簾を雨に捲くを説かん。
三杯の後に、一真を自ら得ば、唯、素琴を月に横たえ、短笛を風に吟ずるを知るのみ。
せまい部屋の中に住んでいても、あらゆる思考を捨て去ることができれば、ことさらに縢王閣のように、色あざやかな棟木に南浦の雲を飛ばしたり、玉のすだれを西山の雨に捲き上げたりするような、豪壮な楼閣の眺めなどを説く必要はない。
わずか三杯の酒だけでも、ほんとうの真理を自ら体得できれば、ただ飾りのない琴を月下に横たえて弾じ、短い笛を風に吟ずるように吹くだけでも楽しみがそこにあるのがわかる。
狭く窮屈な部屋に住んでいても、執着心や悩み事などすべてを捨て去れば、自然の情緒を感じることができる。なにも、絢燗豪華な御殿に住んで、美しい屋根にかかる雲や玉のすだれに降る雨を眺める必要はない。
天地の真理がわかっていれば、わずか三杯の酒を飲んだあと、月の下で粗末な琴を奏で、そよ風に吹かれながら短い笛をふくことに、人生の楽しみを感じることができる。
たった今の現状に窮屈に思う、まずそう思わせる気持ちを捨てて、
目の前にある真理に気づいて、それを楽しめば、それ以上を求めなくていいってことかな。
万籟の寂寥たる中、忽ち一鳥の弄声するを聞かば、便ち許多の幽趣を喚び起す。
万卉の摧剥たる後、忽ち一枝の擢秀するを見ば、便ち無限の生機を触れ動かす。見るべし、
性天未だ常には枯槁せず、機神最も宜しく触発すべきことを。
すべての物音がひっそりとしてものさびしいとき、ふと鳴く小鳥の一声を聞くと、それがそのまま、多くの幽玄な味わいを呼び起こす。また、多くの草花が枯れ凋んで落ちた後、ふと一枝が抜きん出て花を咲かせているのを見ると、それがそのまま、かぎりなく生生発展する命のはたらきを起こさせる。これらのことから、人間の本性はいつも枯れはてているとはかぎらず、生き生きとしたはたらきがよく外界の刺激によって呼び起こされることがわかる。
音がしないと嘆くより、ふと耳を澄まし鳥の声を聞けば、そこに多くの生を感じることができる。目の前の草花が枯れても、また芽吹く花を見れば、そこに限りない生命の連なりを感じることができる。心が枯れ果てていると立ち止まらず、生き生きとしていれば自分以外の存在から刺激され心が晴れてくる。
今起こっている現象に全てをゆだねず、耳を澄ましたり、周りをよく見れば、それとは別の感動が見えてくるってことなのかな。
こころはみにくくもあるしはれやかでもある。



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